クールな社長の甘く危険な独占愛
二
目黒の大通り沿いに、社宅がある。
十二階建マンションの、七階フロアの四部屋が社宅として割り当てられていた。
さつきが二年前就職した時、社宅があることに小躍りした。
都内のこんなにいい立地に、信じられないようなリーズナブルな家賃で住める。
さつきは迷わず社宅に申し込んだが、今となれば後悔しかない。
土曜日の朝七時。
春の優しい光が、グリーンのカーテンの隙間から入り込む。
さつきは無印良品で買ったシンプルなベッドから起き上がると、そっとカーテンを開いてベランダをのぞいた。
いない……よね?
さつきは確認すると、やっとカーテンを開けて、ガラス戸を開いた。
大通りから上がる車の音。
空は澄み切って、白い雲が所々浮いている。
「いい天気」
さつきは大きく息を吸って、笑顔を浮かべた。
いいマンションだと思う。
単身用の1LDK。
ベランダは広く、デッキ板が敷かれている。
日当たりはいいし、セキュリティもしっかりしている。
けれど社宅としては、すこぶる人気がないのだ。
四部屋のうち、今は二部屋しか埋まってない。
さつきの部屋と、その隣の角部屋に社長が入居しているだけ。
さつきはちらっと隣のベランダを見ると、深くため息をついた。
「社長なんだから、わざわざ社宅に住まなくてもいいのに。どういうこと?」
さつきは口を尖らせた。