クールな社長の甘く危険な独占愛
社長に連れられて、マンションからほんの五分ほどの、バーのようなところへ連れて行かれた。カウンターしかない小さな店で、四十代の男性が一人でやっているようだ。
ビニールサンダルをペタンペタン言わせて、社長は奥から二番目の席に座った。
「さつき、こっち」
さつきは壁際の席に、渋々座る。
「あら、今日はこの子をお持ち帰り?」
その甲高い声に意表を突かれて、さつきはその男性を驚いて見上げた。
「お持ち帰りも何も、隣に住んでる」
「相変わらず、モテテるようで。いやんなっちゃうわ」
マスターはそう言って、すねるフリをした。
「マスターは、俺のことが好きなんだ」
さつきに言う。
「はあ」
さつきはうなずいたが、それが冗談なのか本気なのかはさっぱりわからなかった。
暗い店内。
ゆるやかな音楽。
「俺は飲むけど。さつきは?」
「……わたしは結構です」
社長は「だよな」と言って笑った。
「今日の子は、遊ぶにしてはピュアな感じね」
マスターが支度をしながら話しかける。
「遊ぶのやめたんだ」
「またまたー。お金持ちで、そのルックスで、遊ばないわけないじゃな〜い」
「先週、人間関係、きれいさっぱり、掃除してきた」
さつきはウーロン茶のグラスを傾けながら、『掃除』ってそういうことかと、今更ながら合点した。