クールな社長の甘く危険な独占愛
二
絶対に、嘘だな。
和茂はメープル材のデスクの下で、長い足を組みかえる。それから考えるように足をぶらぶらさせた。
男の影なんか、微塵もない。
だいたい男がいたら、もう少し、なんていうか、色気があるものだろう?
あんな真四角なまま、男と付き合えるわけがない。
ハンコを押さなきゃいけない書類は山積み。
和茂は軽くため息をついた。
でももし、婚約者がいるというのなら、このゲームが想像以上に楽しくなるかもしれない。
そこにノックが二回。
「入れ」
和茂は頬杖をついて、ドアが開くのを見つめる。
今日も相変わらず地味な格好。
俺の方がよっぽど女子力が高い。
あのメガネ、外せばそれなりなのにな。
さつきがデスクの上の未決ボックスに新しい書類を入れる。
「稟議書が二件上がってまいりました。吉岡室長の件は急ぎだそうです」
「わかった」
「来週の、総新テック会長との会食の場所は、どちらをご希望されますか」
「総新の会長は田園調布に住んでいるから、高速で帰れる場所に。あと、和食好きだ」
「かしこまりました」
さつきが頭を下げる。
和茂は素早く手を伸ばし、さつきの顔からメガネをとった。