クールな社長の甘く危険な独占愛
「あっ」
小さく声をあげて、さつきが目をおさえる。
「長尾、視力いくつ?」
「……0.05です。あの、返していただけますでしょうか?」
「いいよ」
和茂は、メガネの耳にかける部分に唇をつけて、微笑みかけた。
さつきの顔が蒼白になる。でも耳だけは真っ赤だ。
あ、警戒してるしてる。
なんかされると思ってるんだな。
まあ、するけどさ。
「あの……返して……くだ」
「だからいいって言ってるじゃないか。ほら、手をのばせよ」
和茂は意地悪く言った。
さつきの腰が引けている。それでも言われるがままに、メガネに手を伸ばした。
和茂はぐっとさつきの手首を握る。さつきが逃げようと後退ったが、許さなかった。
ぐいっと引っ張って、膝に座らせる。
「……と、扉が開いてます」
さつきが小さな声で訴えた。
「知ってるよ。だから静かに」
和茂はわざと耳元に話しかける。
「本当に、困るんです」
さつきが語調を強めて言う。
「いつ、結婚するんだ?」
「……まだ、具体的には」
「へえ」
さつきは頑として和茂を見ない。
「俺にキスしたくなったら、婚約解消するんだろ?」
「……したくなりません」
「そんなはずはないな」