クールな社長の甘く危険な独占愛
和茂はさつきの頬に唇を近づける。さつきがぎゅっと目を閉じた。
「ほら今だって、揺れてる」
さつきは和茂の手を振りほどくと、膝から飛び降りた。真っ赤な顔で睨みつける。
「どっ、どうして、そんな一方的に。したくなったら『負け』だなんて、おかしいです!」
和茂は椅子に背を預け、足を組み替える。
「確かに……一方的だな。悪かった」
さつきは、ポカンとした顔で、和茂を見た。すんなり自分の意見がとったことを信じられないようだ。
「じゃあ、俺がさつきにキスしたくなったら、さつきの勝ち」
「は?」
「さつきが勝ったら、もうちょっかい出さないよ」
「はあ」
さつきは解せないという顔で、少し首をかしげる。
メガネを外していると、案外、いけてるんだよな。
和茂はメガネを手に、そんなことを考えた。
「じゃあ、頑張れよな。メガネをとったほうが、勝率が上がる気がするけど、返して欲しい?」
さつきはちょっと考えるように眉をひそめ、それから「は、はい」と頷いた。
和茂はデスクの角に、メガネをそっと置いた。
さつきの身体から、緊張が伝わって来る。
「何もしないよ」
和茂が笑っていうと、さつきはさっとメガネを掴んで、ドアへと小走りに駆け寄った。
「失礼します」
メガネをかけ直したさつきが、ぺこんと頭を下げる。
そして、扉がパタンと閉まった。
「楽しいな」
和茂は上機嫌で、書類にハンコを押し始めた。