クールな社長の甘く危険な独占愛
鏡に向かって、一つにまとめていた髪をとく。ゴムのあとが不自然なウェーブを作っていた。
「どういうこと?」
さつきはブラシで髪をとかしながら、今日社長が言っていたことを考えた。
『俺がさつきにキスしたくなったら、さつきの勝ち』
『さつきが勝ったら、もうちょっかい出さないよ』
そもそも、こんな訳のわからないゲームで勝ち負けをつけるって……意味がわからないし。
これって、いわゆるパワハラか、もしくはセクハラなんじゃないの?
でも悔しいのは、社長に顔を覗き込まれると、どうしても胸がドキドキしてしまうこと。
「あの人、自分がすごく魅力的だって、知っててやってるから、困るんだわ」
さつきはため息をついた。
あんな風にチャラチャラして、女性にだらしなさそうで、ナルシストで。
自分が楽しく過ごすためだけに、秘書にちょっかいを出してくる。
「最低」
さつきはプリプリ怒りながら、リビングへと戻った。
今日、社長は取引先に挨拶に行き、そのまま会社には戻ってこなかった。さつきはこれ幸いと、早々に帰宅。きっと社長はそのままお酒を飲みに言って、帰宅は遅いだろう。
「何食べようかなあ」
冷蔵庫の前で考える。
「冷凍ご飯がたくさんあるから、オムライスとか……」
引き出しを引っ張りながら、独り言を言っていると、ピンポーンとチャイムがなった。