クールな社長の甘く危険な独占愛
「……また?」
さつきはあからさまに顔をしかめた。
「お酒飲んで帰ってくるんじゃないの? ちょっと放っておいてほしいのに」
さつきは悪態をつくと、社長を無視する訳にもいかず、玄関へ出た。
「どうされました?」
「腹へった」
「……そう、ですか」
さつきは困った。
とにかく、なんとか、社長を追い返したい。
会社で着ていたスーツのまま。銀縁のメガネが、社長をすこぶる知的に見せている。
「今日はちょっと用事が……」
苦し紛れにそんな言葉が口をついて出る。
すると社長が「ふうん」と言って、口元に笑みを浮かべた。
ポケットから何かを出すと放り投げる。さつきの頭の上を通って、リビング入口ぐらいのところでチャリンと音がした。
さつきは思わず振り返る。
「鍵、落としちゃった」
社長が言う。「拾ってくれる?」
さつきは思わず「ちょっと……もう」と呟く。
それから五歩ほどあるいて、鍵を手に取る。
「ありがと」
頭のすぐ後ろで声が聞こえた。
慌てて振り返る。
社長はさつきの手から鍵を取ると、さっさとリビングへと入っていった。