クールな社長の甘く危険な独占愛
三
あのあと。夜の十時。
さつきの作ったオムライスを食べて、社長はやっと隣の部屋へと帰って行った。
どこまで身勝手で、どこまで人を翻弄するのだろう。
昌隆に掛け直すと、昌隆はどこか不安げな声を出した。『あれは社長のいたずらだ』と言っても、合点がいってないようだった。
さつきはひたすら謝るしかなかった。
「長尾さん、ぼーっとしてる」
隣から声をかけられて、はっと我に返った。
昼下がりのオフィス。
社長はランチミーティングで出ている。
「あ、ごめんなさい。考え事してて」
「悩み事ですか?」
「ちょっと、ね」
さつきは両頬をパチンと手で打った。
「恋の悩みですか?」
リカが満面の笑みを見せる。
さつきは慌てて首を振った。「ちがうちがう」
「わたしは最近、恋の悩みがなくて悩んでます」
りかは寂しそうにうなだれた。「この職場じゃ、出会いもないし」
「……そうよね」
さつきも話を合わせる。
「社長って、どんな恋愛するんでしょうね」
りかが言った。
「……さあ」
さつきは首をかしげる。
内心、人を愛したことなんかないんじゃないかな、と思いながら。
社長は、恋愛も遊びの一つにちがいない。