クールな社長の甘く危険な独占愛
「あんなに整ってるんだから、きっと女性にはモテると思うけど」
りかが続ける。
「でもきっと、踏み込ませてもらえない。そんな雰囲気です」
りかの読みは当たってるかも。
踏み込ませないけれど、こっちの事情はお構い無しにどんどん踏み込んでくる。
厄介だわ。
秘書室の扉が開く音がした。
さつきとりかが慌てて口を閉じ、背筋を伸ばす。
「おかえりなさいませ」
頭を下げると、社長はまっすぐさつきの席へとやってきた。
「これから、何も入ってなかったな」
「はい。ですが、四時半から、佐々木部長とのミーティングが入っております」
「じゃあ、出かけてくる。それまでには戻る」
「かしこまりました」
またしばらく社長の顔を見なくて済むと思うと、ほっとする。さつきは自然と笑みがこぼれそうになったが、「長尾、お前も来い」という声で、笑みは瞬時に消え去った。
「どちらへ」
「日広の本社」
社長の親の経営する会社だ。
「おい、早くしろ」
部屋を出て行こうとする社長に急かされて、さつきは小走りについていく。
スーツの後ろ姿を見ながら、頭が痛くなる予感がした。