クールな社長の甘く危険な独占愛

デニムにゆったりとしたブルーの薄手のセーター。
まだ少し肌寒いので、首にマフラーを巻いた。
洗いたての髪をなびかせて、地下鉄の広尾駅の階段を駆け上がる。

広尾の朝九時。
それほど混んではいない。
さつきはやや冷たい空気を吸い込んで、歩道を早足で歩いた。

大丈夫。
今日送信しておけば大丈夫。

さつきは繰り返し自分に言い聞かせる。

社長にはバレないはず。
きっとまだ部屋で寝てる。

メールを送信したら、カフェでお茶をして、あの部屋にはギリギリまで帰らない。
本当はお洗濯したり、お掃除したりしなくちゃいけないけれど。
気詰まりでならないから、少し解放されたい。

あ、あと……。

さつきの瞳に、影がちらっと現れ、消えていく。

あと、週末だからあの人に、電話をしなくては。

さつきは斜めに下げたバッグのストラップをぎゅっと握った。

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