クールな社長の甘く危険な独占愛
「そうか」
和茂は黙った。
二年前、武則は離婚した。
当人同士が望んだ離婚ではなかった。
「美麻さんとは連絡してる?」
和茂は尋ねた。
武則は首を振る。「できるわけないだろう」と少し強い口調で言った。
そもそも武則は、どこから後悔しているのか。
出会ったこと?
恋に落ちたこと?
無理を押して結婚したけれど、守りきれなかったこと?
もし愛する人ができても、あの家に関わらせてはいけない。
さつきの震える指先が脳裏に浮かぶ。
絶対に、ダメだ。
「あの日、あの子に、俺に会うって言わないで、連れてきただろう」
「うん」
「めちゃくちゃ動揺してたぞ」
「おもしろいだろ?」
和茂はその時のさつきを思い出して、ワクワクしてくる。
「おもしろいって……かわいそうじゃないか」
「かわいそう?」
「そうだよ。お前にからかわれて」
「迷惑ですって言われた。この間」
「ほら」
武則が眉をしかめる。咎めるような視線。
「ちょっと遊んだだけじゃないか」
その非難の目に居心地が悪くなり、和茂は憮然とした表情を浮かべる。
「お前は……」
武則が少し言い淀む。
「なんだよ」
「お前は、気軽に、他人の人生に入りすぎる」