クールな社長の甘く危険な独占愛
ピンポーン。
下のエントランスの呼び出しがなった。さつきはコップをシンクの中に置いて、テレビ付きのインターホンの『通話ボタン』を押した。
それから「あっ」と声を上げる。
『さつきちゃん、久しぶりです』
インターホンのテレビに映っていたのは、愛知の工房にいるはずの昌隆だった。
「昌隆くん……どうして」
さつきは動揺した。
『心配になって』
少しうつむき、突然の訪問を詫びているような顔。
「あ、今、開けますね」
さつきは慌てて『解錠ボタン』を押す。
あの夜のことが蘇った。
さつきは冷静にと思いながら、深呼吸を繰り返す。
大丈夫。
私はあの人と結婚するのだから。
玄関の呼び出しがなる前に、さつきは扉を開けて廊下に出る。
エレベーターの登る音。
扉が開き……昌隆の姿が現れた。
「さつきちゃん」
人の良さそうな顔に、笑顔を浮かべて、右手を上げる。
さつきも小さく手を上げる。それから驚いて固まった。
昌隆の後ろから、社長が冷たい目でこちらを見ている。
どうやら同じエレベーターだったらしい。
さつきは上げた手を、そっと下ろして、これから起こるであろうトラブルを想像して冷や汗をかいた。