クールな社長の甘く危険な独占愛
昌隆は、先日社長が座っていたところと同じ場所にあぐらをかき、落ち着かなそうに膝を揺らす。
少しクセのある髪に、職人らしい細い身体の線。どこかあどけなく可愛らしい顔つきで、高校時代にはかなりモテテいた。白いシャツにスラックスという地味な出で立ちでも、ちょっと目を引く姿だ。
「あの人が、この間電話を切った人?」
熱いお茶をいれたマグカップを目の前に置くとすぐ、昌隆は尋ねてきた。
「そうです」
「あの人、この家に上がる?」
「この間は、たまたま……」
さつきは俯く。
昌隆が不安に思ってる。
さつきは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「あの社長、さつきちゃんが好きなのかな……」
昌隆がつぶやいたので、さつきは「そんなことないから」と語気を強めた。
「あの人は、面白がってるだけ」
「……そうか」
昌隆は、言葉と相反して納得していないように首を軽くかしげた。
しばらくの沈黙。
さつきは両手でマグカップを持って、昌隆が喋り出すのを待った。
昌隆は少し迷うような顔をして、それから思い切って口を開いた。
「……さつきちゃん」
「はい」
「今年、師匠の七回忌だ」
「……うん」
「俺は今年、師匠との約束を守りたい」
「……」
「さつきちゃんと結婚したいってこと」
「わかってるから……大丈夫」
本当は大丈夫じゃない。
とうとう、この日が来てしまった。