クールな社長の甘く危険な独占愛

エレベーターを降りると、静かな休日の社内。
制作部や企画部のフロアは、休日といえどもいつも人がいる。
昼夜を問わず働いているのだ。
でもこの役員フロアには、人っ子一人いない。

ああでも、すごい、開放感。

さつきはポケットからカードキーを取り出し、秘書室に入った。

蛍光灯の消えた室内。
窓からの光だけが、ほのかに部屋を照らす。
部屋の隅にある冷蔵庫が、ブーンと低く唸っていた。

蛍光灯をつける。
さつきは自分のデスクに向かうと、コンピュータを立ち上げた。

「誰もいないって、すごくいい」
さつきは声に出して言った。

「音楽かけちゃおうかな」
さつきはスマホを取り出すと、お気に入りのイギリス人歌手の曲をかけ始めた。

普段では絶対にできないことをすると、なんだかウキウキしてくる。

常務へのメールを作成して、何度か確認。

「よし」
さつきは勢い良く送信ボタンを押した。

「やったー。終了!」
さつきは椅子でうーんと伸びをする。

カタン。

その時、かすかな音が聞こえてきた。

え?!

さつきは、腕を上に伸ばしたまま固まった。
緊張して、耳をすます。

ガタッ。

また音。

さつきの顔から、あっという間に血の気が失せた。

社長室に、人がいる。


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