クールな社長の甘く危険な独占愛
「で、電話越しに俺の声が聞こえたから、慌てて迎えにきた、と」
社長がさつきに目を向ける。
「ふうん、そっか」
小さくつぶやいた。
「遺言を守って結婚しようだなんて、最近では珍しく律儀だな」
「……はあ」
昌隆はわけがわからず、曖昧に頷くしかできない。
「でも、長尾を連れて行かれると、困るんだ」
社長が言った。
「長尾のおかげで、ここ最近の俺は楽しくて仕方がない。だから、長尾が『結婚したくない』と言っても、無理に連れて行かないでくれ」
「それは……さつきさんとおつきあいされている、ってことでしょうか」
昌隆は恐る恐る声に出す。
「付き合ってないよ」
社長が言う。
「俺は、誰とでも付き合うし、誰とも付き合わない。でも長尾は必要」
昌隆が「は?」と声に出す。
社長の言うことが、完璧に理解できて、納得できる。
社長が誰かと本気で関係を築くことなんてないのだ。
理解できているけど、どこかショックを受けている、自分が信じられない。
「まあ返事は、長尾次第だろうけど」
社長はそれだけ言うと、立ち上がった。
「社長?」
社長が何をしにきたのか、イマイチわからない。
「長尾、明日はいつもより早く会社に来い」
「は、はい」
「だから、君はもう帰ったほうがいい。ホテルは取ってあるだろう?」
言われた昌隆は、気圧されたように頷いた。
「じゃあ、エントランスまで送ろう」
社長は言った。