クールな社長の甘く危険な独占愛
「社長にとっては、そうかもしれません」
さつきはモヤモヤしながら、そう返した。
「可哀想なやつだ」
社長が言った。
頭の中の何かが切れる。
ブワッと涙が溢れてきた。
「社長には関係ありません!」
抑えきれず声を荒げる。
ポーンと音が鳴って、エレベーターが開いた。さつきは思わず廊下に走り出る。
「ずかずかと私の人生に踏み込んできて。いい加減にしてください!」
手を掴まれて転びそうになるのを、社長の腕がとっさに支えた。
「あいつと、キスできるのか!?」
涙で潤んだ瞳で、社長の真剣な顔を睨みつける。
「できます! っていうか、しました!」
社長の体躯からは想像もできないくらいの激しい力で、さつきの腕が引っ張りあげられる。
そのまま勢い良く、廊下の壁に背中を打ち付けた。
衝撃で目の前が一瞬ぐらつく。
両手がさつきの頬を強く挟む。振りほどこうとしたが、びくともしない。
「俺とはしたくないけど、あいつとはできるんだ」
「は、離して……ください」
瞳が冷たく光っているのが見えた。
怒ってる。
社長の顔が近づいて、唇が触れそうになった。
「やだ」
さつきが涙声で言うと、社長が薄く笑う。温かな呼気が唇にかかった。