クールな社長の甘く危険な独占愛
「そんなに、負けたくない?」
「そういうことじゃ……ありません」
「じゃあ、なんだよ」
社長が喋るたびに、触れそうになる唇。
さつきの頭はパニックで朦朧としている。
「遊びのキスは、嫌なんです……」
社長の手が緩む。
「遊びでなんて、できません。私は社長とは違います」
社長を見上げると、意表を突かれたような顔をしている。
「私にキスしたくなったら、負けだっておっしゃいましたよね。私は秘書だから、社長は負けるゲームはしないって知っています」
「……」
「社長は絶対に、心を渡さない。そんなの……」
さつきは唇を噛む。
「私を、おもちゃに、しないでください」
さつきはそう言うと、社長の手を払って部屋へと走りこんだ。
玄関で座り込み、顔を覆う。
ほんの少し身を寄せれば、唇が触れていた。
さつきの胸が壊れたみたいに激しく動いている。
最初から負けは決まっていたんだ。
だって彼に、
キスして欲しかった。
すごく、キス、してほしかった。