クールな社長の甘く危険な独占愛
そこに秘書室の扉が開く音がする。
「社長、いる?」
永井専務が扉から首を出し、小声で尋ねる。
「はい」
さつきは頷いた。
永井専務は、怒られる前から怒られるみたいな、そんな雰囲気だ。身を縮めて、おどおどしている。
「今日、機嫌はいい?」
「……少し、お疲れのようですが……」
リカがうまく取り繕う。
「話せるか、ちょっと聞いてみて」
永井専務が言うので、さつきは社長に内線をかける。
「永井専務がお見えで、今少しお時間をいただきたいと、おっしゃっていますが」
「……ああ、通せ」
ぶっきらぼうな声が受話器から聞こえた。
さつきは受話器を置いて「大丈夫だそうです」と専務に伝える。
専務は背筋を伸ばして、ネクタイをなおす。それから「失礼します」と言って、社長室に入っていった。
「永井専務、何しちゃったんでしょう」
リカが社長室を見ながら、恐れおののく。
「先日、永井専務と社長が、リビテックの人と会ってたけれど……それかしら」
「ああ、直接取引きできるかどうかっていう、あの件ですね」
通常、映像制作会社は広告会社から仕事を受ける。
けれどリビテックというメーカーは、広告会社を通さずに直接仕事を下ろしてくれるという。
映像制作会社としては、大きな進歩だ。