クールな社長の甘く危険な独占愛
さつきは、半ばパニックになりながら、スマホの音楽を消した。
それから走って、蛍光灯を消しに行く。
壁にもたれて、息を潜めた。
ドキドキする胸に手を当てて、唇を噛む。
社長は秘書室に人がいることに気づいただろうか。
さつきは足音を立てず、ゆっくりと自分の机に戻る。
コンピュータをそっとシャットダウンしようとしたが、ダイアログが出て「ピッ」と音がなってしまった。
さつきは目を閉じて、静かに呼吸を繰り返した。
きっと社長は、秘書室に人がいることに、気づいてる。
今ここで知らんぷりして部屋を出たら、後が怖い。
社長に一度挨拶をして、それから退社するのだ。
怖くても、嫌でも、それしかない。
さつきはマフラーを取り、ボサボサの髪を整えた。
メガネをまっすぐ掛け直し、背筋を伸ばす。
会社モードに切り替えて、さつきは社長室の扉の前に立った。
ノックを二回。
無音。
もう一度ノック。
それでも無音。
さつきは首をかしげた。
もしかして、早とちりだったのかな。
「失礼いたします」
さつきは静かに扉を開いた。