クールな社長の甘く危険な独占愛
リカの電話が終わると、再び静寂が訪れる。
永井専務は怯えた小動物のように、社長の横で身を小さくしていた。
「永井、お前の度量のなさを、露呈するな」
「も、申し訳ございません」
「こいつは、俺のものだ。お前の奴隷じゃない」
「失礼いたしました」
永井専務はもう、軽くパニックになっているようで、汗をダラダラと垂らしている。
「行け」
「はいっ」
永井専務は逃げるように、秘書室を後にした。
秘書たちは固唾を飲んで、社長を見守る。
誰もが一様に、早く社長室へ入って欲しいと願っていた。
社長は周りを見回すと、軽く笑う。
さつきは驚いた。
会社で笑ったのは、おそらく初めてだ。
「悪かったな」
社長はそう言うと、さつきの頭をポンと撫でる。
それから、社長室へと消えていった。
姿が見えなくなると、秘書室の空気がとたんに緩む。
みんな目を丸くして、今起きた出来事を信じられないと言うように、顔を見合わせた。
「社長……素敵」
りかがうっとりした目で、社長室の扉を見つめる。
「もう、メガネ、ずっとなくていいですよね。あの顔で、笑いかけられたい」
さつきは撫でられた頭を触る。
ときめいてはいけないと思うと、余計に仕草、言葉、表情に心が揺れた。
ダメなのに。
こんな風に思ったら、ダメなのに。
さつきはスカートをぎゅっと握りしめた。