クールな社長の甘く危険な独占愛
「都会は、騒々しいね」
隣を並んで歩く昌隆が言った。
「そうね……実家近くとは全然違います」
実家の近くは真っ暗で、単線の列車が一時間に一本通るのみだ。
「ここにしましょうか」
さつきは路地を入ったところの、小さな居酒屋を指差した。
隅のテーブルにつき、ビールを注文する。
世間話をするには、お互いがあまりにも打ち解けていない。
さつきはおしぼりを触りながら、気まずかった。
「夜、出歩くことなんてないから、新鮮だな」
昌隆が言った。
「近所には何もないし」
そこでさつきは思わず笑みを浮かべる。
「本当に、娯楽が何にもないところですものね」
「東京みたいに楽しいところで過ごした後では、あそこはあまりにも寂しすぎるかな」
昌隆はおずおずという感じで言った。
「いえ……実家ですから」
さつきは言葉を濁した。
「いつまで、東京に?」
「……本当は、さつきちゃんを説得するまでって思ってたけど」
昌隆がいう。
「それだと長くかかりすぎるかもしれない」
「……ごめんなさい」
さつきはうつむいた。
テーブルに運ばれたジョッキに、昌隆が口をつける。
さつきもビールを飲んだ。