クールな社長の甘く危険な独占愛
「さつきちゃんがためらっているのは、社長さんのせい?」
昌隆が尋ねた。
さつきは首を振る。
昌隆の視線が痛い。
「ずっと……さつきちゃんは結婚を迷っているんだろうなって思ってた。恋愛結婚じゃないから、ピンとこないんだろうと」
昌隆が言う。
「でも、結婚を伸ばし伸ばしにしていても、さつきちゃんの中で『結婚する』っていう気持ちがあるように見えた。だから僕は離れていても、どこか安心していたんだ。でも今回は……」
昌隆がさつきの瞳を見つめる。
「本気でためらってる」
さつきの胸がズキンと痛む。
「そろそろ、決めたい。僕も、さつきちゃんも、このままだとどこにも行けない。ずっとこの約束に縛られたままだ」
「僕はずっとさつきちゃんが好きだったから、結婚の約束をしたとき嬉しかった。きっと幸せにするって、そう思ったよ。今も思ってるんだ」
昌隆が照れたように笑う。
「結婚しよう」
きっと、この人と結婚すれば、幸せな人生を送れるにちがいない。父親との約束も守れて、後ろめたい気持ちにもならない。この人を好きだと思えたのなら、どんなによかっただろう。
「……返事は……」
「もちろん、今すぐじゃなくても。でも滞在期間は、最長でも二日。これ以上休んだら、生活が苦しくなるから」
「わかりました」
さつきはうなづいた。
この人と結婚する。
父親との約束を守る。
これ以外の選択肢はないのに、なぜ素直に「はい」と返事できないのだろう。