クールな社長の甘く危険な独占愛

「あの男、殴ってよかった」
和茂は言った。

「いくらなんでも、東京に行かせる代わりに抱くだなんて、卑怯すぎるだろ?」
「ふふふ」

さつきが胸の中で笑う。

「何がおかしい?」
「社長が『卑怯』って言うなんて。立場を利用して、秘書をおもちゃにしてるくせに」

さつきが顔をあげて、和茂に笑いかけた。

手のひらが、さつきの頬に添えられる。
涙の後を親指でぬぐって、顔を近づけた。

さつきが「えっ」と声をあげる。

和茂の動きが止まった。

あ、あれ?
俺は今なにしようとした?

慌てて顔を離す。

さつきが驚いた顔をしている。
「いま……」

顔が一気に熱くなった。

なんだ、これ。
心臓がばくばくして……。

「早く、帰れ」
和茂はそう言い捨てると、さつきを置いて階段を駆け上がった。

俺、なにした?
なに、やらかした?

部屋に駆け込むと、はあはあと大きく息をする。汗をぬぐって「うそだろ」と呟く。

俺がまさか、ゲームに負ける?

「うそだろ」
和茂は玄関に座り込んだ。
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