クールな社長の甘く危険な独占愛

社長のBMWに乗って、メガネショップに連れて行かれた。夜の銀座。ネオンが車内を時たま照らす。

運転席の社長を横目でチラッと見ると平然としている。

やっぱり動揺しているのは、私ばっかり。

さつきは混乱していて、どうしたらいいかわからない。

もともとギャップのある人だったけれど、あんなに無防備になった瞬間は初めてだった気がする。でも、あれも、キスさせるための演技なんだろうか。

「メガネ……」
「はい?」

突然話しかけられて、さつきははっと我にかえった。

「メガネ、俺が踏んだ?」
表情を変えず、社長が言う。

「そうですね」
「階段で?」
「……はい。覚えていらっしゃらないんですか?」

さつきは注意深く社長の顔を観察する。

「覚えてない」
社長はさつきの顔を少しも見ない。「悪かったな」

「いえ……」
会社モードの社長から、今日はなかなか抜け出ない。メガネを踏まれたのはさつきだが、なぜか怒られるような、そんな気にさせる。

< 94 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop