クールな社長の甘く危険な独占愛
銀座の地下駐車場に車を置いて、暗い階段を上がって地上に出る。有名デパートの裏手に、そのメガネショップはあった。ガラス張りの店内。客がほとんどいない。ガラスケースがたくさん並べられていて、さつきは自然と尻込みした。
「……なんだか、高級そうなお店……」
「そうか?」
「あの」
さつきは立ち止まった。
「いつもかけているメガネ、本当に安いんです。フレーム五千円均一なんです。だからこんなところで買っていただかなくても……」
社長はさつきを一瞥すると、くるっと背を向けてさっさと店内へと入っていく。
えー。返事もなし?
さつきは仕方なくその背中を追った。
「いらっしゃいませ、桐田様」
黒のスーツを来た、銀縁メガネの男性スタッフが、寄ってきた。「今日は、どのようなメガネをお探しでいらっしゃいますか?」
「彼女に似合うものを見せてくれ」
「かしこまりました」
あっという間に、メガネフレームが選び出される。目の前のビロード張りの板には、まるで宝石を扱うかのような慎重な手つきで、フレームが並べられた。
「シャープなお顔ですので、少し丸みのあるフレームだと女性らしさを強調してくれると思います。ぜひ、お試しください」
スタッフが言うと、社長が「ほら」とさつきの顔を見る。
さつきは「今すぐかけてみろ」という圧力を感じて、フレームに手を伸ばす。けれど、値札を見て重わず手を引いた。