クールな社長の甘く危険な独占愛

「社長」
「なんだ」
「高いです、これ」

値札には「十五万」と記されている。さつきは何度も「ゼロ」の数を数えた。

「そうでもないだろ」
「……社長には高くなくても、私には」
「買ってやるって、言ってるんだ。文句言うなよ」
「こんな高級品じゃなくていいって、お願いしてるんです」

さつきは社長の目を見て訴えた。毎日十五万円をつけて歩くなんて、気持ちが落ち着かない。

「……おまえ、庶民だな」
社長が笑った。

「そうです」
さつきは思い切りうなづいた。

「ちょっと、かけてみろって。あのでかいメガネ、本当におかしかった」

社長がメガネフレームを手に取った。そのままさつきの耳にかけようとする。

社長の指が耳に触れると、とたんに動悸が始まった。
顔が赤くなるのがわかる。

社長のことを気にしちゃいけない。
彼は私で遊んでいるだけなんだから。

さつきは社長の端正な顔を見上げた。

綺麗な顔。
キスされたら、きっと溶けてしまう。
女性なら誰だって、一度は夢を見る。
そんな人。

< 96 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop