クールな社長の甘く危険な独占愛
部屋の前で「本当にありがとうございました」とさつきが頭を下げた。
「いや、俺が壊したんだ」
和茂はさつきの少し警戒している頬を見る。
なんかされると思ってる?
彼女はそれを、本当に嫌がっているんだろうか。
今まで、女性に拒否されたことがない。むしろ何もしないでも、次々とやってくる。
だから「嫌です」と言われるのは新鮮だった。
でも本当に、彼女は嫌がっていて、死んでもキスなんかされたくないって思ってたら?
和茂の中で、小さな不安が浮かび上がる。
本当に嫌われているのかもしれない。
いまにも逃げ出しそうな彼女を見る。
触れたい。
なんだか突然そう思った。
彼女を抱きしめた感触を思い出す。
小さくて、柔らかい。
もう一度触れたい。でも。
和茂は伸ばしかけた手を引っ込めた。
「おやすみ」
それだけ言うと、さつきに背を向ける。
今、ほっとしているんだろうか。
『社長に遊ばれるよりは幸せかもしれません』
さつきの言葉を思い出した。
さつきの幸せ。そうか。
幸せになりたいだろうな。
和茂は初めてそんなことを考えながら、一人部屋に入っていった。