彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「…相馬さん、私の体を手に入れても、心までは手に入りません」

雪の切実な言葉に、相馬の顔が歪む。

「…お願いです。私を解放して下さい。そうすれば、貴方が犯人なんて言わないし、今までのことも、忘れます。だから」

雪は、相馬の手をきゅっと握りしめた。細長くて、白い綺麗な雪の手。

雪自ら、相馬の手を握りしめている。理由はどうあれ、そんな事ですら、相馬は嬉しかった。

「…そんなに、黒澤琉偉が好きですか?」
「…」

「…答えてください。白井雪さん」
「…はい、好きです」

「…どうして彼なんですか?私ではダメですか?彼と変わらないいや、それ以上に何でもあげられます。愛情だって、彼以上に」

相馬の言葉に、雪は首をふる。

「…相馬さんでは、ダメなんです…黒澤琉偉じゃなきゃ、私の心は動かない…どうしても、彼の元へ戻れないなら、私は、ここで死ぬ覚悟です」

凛とした顔で、雪は相馬に言い切った。

そんな雪を見て、相馬は力なく笑った。

勝ち目がないのははじめから分かっていた。だが、こうもハッキリ言われると思っていなかった相馬は、全身の力が抜けるのが、自分でもわかった。

ずっと気を張り詰めていたのだ。そのいとも、切れてしまった。

「…私の敗けですね」
「…え?」

「…こうやって、二人で話ができて良かった。…さぁ、雪さん、貴女を家へお送りしましょう」

「…帰してくれるんですか?」
「…えぇ、勿論です」
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