彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
…結局、最後まで、琉偉は来なかった。

「…え?!泊まってくれるんじゃないの?」

さつきの声が、リビングで響く。それに便乗して、子供達もブーイング。

泊まって、泊まってとせがまれたが、明日からまた仕事をしなければならず、最終便の飛行機で、帰らなければならない。

「…すみません、どうしても私じゃないと出来ない仕事で」

「…もぅ!琉偉は何をやってるのよ!まー君、早く来るように、電話して」

「…そう言われても、今日の仕事は無理だろうな」

課長もお手上げ。

「…あの、私、そろそろ出ないと、飛行機に間に合わなくなりますので、失礼します。えっと、また、向こうにも遊びに来てくださいね?子供達も連れて」

雪は今にも喧嘩し出しそうなさつきたちを見て、自分がいなくなれば、喧嘩しないだろうとおもい、早々に、家を出た。

琉偉に、一目でも会えたら。

その姿だけでも見ることが出来たら良かったのに。

そんな小さな願いも虚しく、空港に着いてしまった。

「…次に東京に帰ってくるのは、来年の春、かな」

そう呟いて、定刻の飛行機に、乗り込んだ。

席につき、窓の外を眺める。

真っ暗で、ポツポツ明かりが見えるだけ。

なんだか、寂しくなって、雪は目をつぶった。

その時だった。












「…白井雪、今すぐ降りるぞ」





その言葉が聞こえたと同時に、誰かが雪の腕を引っ張り立たせると、無理やり飛行機から雪を降ろしてしまった。


…後ろ姿だけでは誰だかわからない。

唯一分かるのは、男だと言うこと。
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