彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
仕事の事も、邪魔者もいない、静かな二人だけの時間を、噛み締めるように抱き締めあう。

雪も、琉偉も、本当に幸せだと感じた。

…その日の午後。

３日ぶりにお風呂に入った琉偉は、スッキリした気分で、携帯を見た。

…。

課長から、メールが入っていた。

『体調が戻り次第、本社に至急お戻りください』

そんなメールを入れてくるなんて、何事かと、急いで電話をする。

「…マー、どうした？何かトラブルか？」

数分話し合い、携帯を切った琉偉は、大きなため息をついた。

急いで、東京に戻らなければならない。

琉偉は、スーツに身を包むと、雪の元へ急いだ。

「白井さん」
「…どうしたんですか、黒澤社長。スーツに着替えて‼️帰るのは、明日の朝、１番の便だった筈じゃ？」

「本社で、トラブルが起きたらしい。急いで、戻らなければならない。君も一緒に帰らないか？…なんて、無理だよな」

困惑する雪を抱き寄せた琉偉は、雪のおでこに、そっと口づけると、踵を返し、旅館を出ていった。

雪は、その場から一歩も動けない。

それを見かねたのは、父だった。

「雪」
「…お父さん」

「こっちの心配はしなくて良い。黒澤社長と一緒に行きなさい」
「でも」

まだ、心が決まらない雪の背中を押したのは、母だった。

「躊躇わない。愛した人には付いていきなさい。もう二度と、会えなくなるかもしれないのよ？この期を逃したら、黒澤社長と一緒になんて、いられなくなる」

その言葉に、雪の心は決まった。

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