彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
そんな雪を、琉偉はそっと抱き締めた。

「今すぐ結婚したいけど、零士が一人前になるまで、もう少し待って」

「…はい、勿論です。零士さんが一人前になるお手伝い、しっかりとしていきます」

雪と琉偉は見つめ合うと、お互いの顔が近づき。

ゴホンッ。

突然の咳払いに、二人は、ハッとして、少し体を離した。

「…取り込み中失礼します。頼まれた書類をお持ちしました」

そう言ったのは、零士だった。

「ありがとう、そこに置いておいてくれ」

琉偉の言葉に従い、テーブルの上に書類を置くと、零士は何事もなかったように部屋を出ていく。

ホッとする雪に。

「いくら婚約者でも、仕事中です。行動は慎んでください」

睨むように零士は雪を見て言った。

…雪はその通りだと、反省する。

そんな雪を見て、琉偉も申し訳なさそうな顔をした。

「仕事に戻ります」

雪はそう言うと、一礼して、部屋を出ていった。

その日を境に、二人の距離は離れていった。

仕事は勿論、プライベートでも。

仕事が忙しいせいもあった。

出張も、課長か零士が行くようになった。

雪は秘書室でデスクワークやスケジュール管理を担っていた。
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