彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「今日は、特に外出する予定は入っておりません。午後1時から、重役会議が入っています。それまでは、書類の確認をお願いします。何かあれば、いつでもお呼び下さい。それでは失礼致します」

雪もまた、いつものように業務内容を告げると、そのまま社長室を出て行こうとしたが、それが気に入らなかった琉偉は、雪に近寄ると手を掴んだ。

当然、雪は驚いて琉偉を見上げる。

「…昨夜のことには触れないんだな?」
「…昨夜は、とても救われました。独りでいたら、今日普通に出社する事も出来なかったと思います。ありがとうございました」

それだけ言うと、軽く頭を下げた雪。事務的なその会話が、琉偉の気持ちを逆なでする。

「…キスした理由は聞かないのか?」

その言葉には、流石の雪も動揺した。…が。

「…昨夜の事は、忘れましょう。黒澤社長にとっては、私なんかと過ごした時間など、汚点にしかなりません」

「…俺は、忘れる気はない」

琉偉の言葉に、雪は更に動揺する。それでもなんとか笑顔を貼り付け、頭をもう一度下げると、逃げるように
社長室を出て行った。

「…汚点だと?そんな事、思う訳がないのに」

琉偉は一人、そんな事を呟やいていた。
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