彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
3週間後。

出張から帰って来た琉偉は、いつの間にか、仲良くなっている雪と零士を見て、驚かずにはいられなかった。

あんなに冷たかった零士が、手のひらを返したように、雪に優しく接している。

…琉偉は、知らなかった。雪が体調不良で倒れた事を。

秘書室のみんなに、雪が口止めをしていたからだ。

そうしなければ、琉偉は仕事を取り止めて、帰ってきてしまうことを、雪はわかっていた。

勿論、仕事が一番の琉偉だが、雪のためなら、なだってする。

だから、雪は黙っていた。

体調は戻らないまま、仕事を休むことはなかった。

そんな雪を、サポートし続けたのは零士だった。

…雪は、その日も遅くまで仕事をする琉偉のサポートをしていた。

だが、体調が思わしくなり、見かねた零士が、無理やり家に連れ帰った。

琉偉は、理由がわからないまま、仕事を早く終わらせ、自宅へと帰る。

…帰ったのは、深夜1時。

玄関を開けると、男物の革靴。

言い様のない不安に刈られ、琉偉は慌てて中に入るが、雪はどこにも見当たらない。

最後に行き着いたのは、寝室。

…雪は、ベッドで眠っている。

その傍らに、零士がいた。

雪の手を握りしめ、零士も寝てしまっていた。

「…零士、起きろ」

雪を起こさないように、零士を起こした琉偉は、自分をなんとか落ち着かせ、リビングに零士を連れていった。
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