彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
…案の定、自社工場で、トラブルが起きていた。

地震で火事になり、全てがストップしてしまったらしい。本社の担当者も工場に向かったが、担当者一人では拉致があかない。

工場側は、上の指示を仰ぎたいと連絡してきているが、重役会議中だ。しかもその後は、常務も専務も別件で県外に飛ばねばならなかった。

残るは社長である琉偉だけが頼みの綱なのだが、琉偉自身も、明日は仕事が詰まっている。

今から工場に向かったとして、今夜中に片がつくとは思えなかった。だからと言って、秘書が勝手な判断は出来ない。

雪は、状況を簡潔にメモし、会議用資料の上に置くと、会議室に戻り、そっと琉偉の前に置いた。

…それを見た琉偉の顔が一瞬で変わる。そして重役達に向かって言い放つ。

「大事な案件については話せたな、後は、君達に任せる」

そう言うと、琉偉は立ち上がる。

「黒澤社長、まだ終わっていませんが?」
常務が言う。

「自社工場で、トラブルだ。上の指示を仰ぎたいと要請が来てる」
「それでは私が」

専務が言うが、琉偉が止めた。

「専務はこの後大事な仕事が立て込んでるだろ?今日はもう体が空くから私が行きます」

その言葉に、重役達は頭を下げると、課長に結果が分かるようそこにとどめ、雪を連れ、会議室を出た。
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