彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「琉偉さ…黒澤社長、なんでこんな事」

雪の問いに、琉偉は答えない。

「…雪、黒澤社長が悪い訳じゃない。俺は大丈夫だから」
「大丈夫じゃないじゃないですか。血が出てる」

雪は、カバンからハンカチを出すと、義人の口にそっと当てる。義人は少しだけ顔を歪めた。

「…黒澤社長、理由はどうあれ、人に手をあげるなんて間違えてます。私は、黒澤社長を見損ないました」

そう言って琉偉を睨んだ雪。

…琉偉は、傷ついたような瞳で雪を見つめた。

「立てますか?」

そう言いながら、雪は義人を立たせた。

「…白井さん」
「…黒澤社長、話はまた今度にしてください」

そう言い、雪は義人を連れて行った。

…レストランから、義人の会社まで、さほど遠くはなく、雪は義人をそこまで送り届けた。

そして、会社の義人の部屋で、傷の手当をすると、雪は帰ろうと立ち上がった。

「…行くな、雪」

雪の手を掴んだ義人が、言った。

「鮫島さん…帰ります」
「俺の傍にいてくれ」

「…」
「俺には雪が必要だ。あんな男の所へなんて行くな…行かせたくない」

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