彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
…朝、寝返りをうった琉偉は、顔にふわっと髪の毛が当たり、目をゆっくりと開けた。

「…」

琉偉の目の前に、雪の寝顔。ずっと傍にいてくれたのかと思うと、胸がしめつけられるほど、キュンとして、嬉しかった。

…握られた手に気づき、琉偉はその手を握りしめた。

「…ん…」

眠っていた雪が目を覚ます。琉偉の顔が目の前にあって、驚いた雪は飛び起きる。しかも手を握られていて、さらに焦り、その手を解こうとしたが、琉偉が離さなかった。


「…ぇっと、…気分はどうですか?」
「…まぁまぁ、かな」

「あ、熱!」
「…」

空いてる方の手で、琉偉の額を触る。琉偉はちょっと驚いて、固まる。

「…うーん、まだ熱いですね。タオル置きたいので、離してくれますか?」

雪の言葉を、今度は素直に受け入れた琉偉は、その手を離した。

キッチンに行き、水を変えた雪は、再び琉偉の傍に行くと、タオルを絞り、また額に当てた。

「…お腹、空いてます?薬も飲んだ方がいいんですけど」
「…あんまり食欲ない」

琉偉の食生活は外食に頼っているため、冷蔵庫の中はほぼ空っぽ。困った雪は、ここに来る時、近くにコンビニがあるのを見ていた。

「…ちょっと、コンビニ行ってきますね」

そう言うと立ち上がろうとしたが、琉偉に止められた。

「…行くな」
「…買い物に行くだけですよ」

「…行くな」

子供みたいだなと、思うと、少し笑えた。すると、琉偉は、少し拗ねた顔をする。

「必ず帰って来ますから」
「…絶対?」
「…はい、絶対」

クスクス笑いながら答えると、琉偉はようやく手を離した。
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