彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
3.彼女は白
急ぎ足でマンションに戻ると、そっと寝室を覗いてみる。…そして、雪はギョッとする。

「何やってるんですか‼︎」

そう言いながら、琉偉に駆け寄ると、ノートパソコンを取り上げた。

「…何って仕事」
「いい加減にしてください!寝てなきゃ治るものも治りませんよ!」

プンスカ怒りながら、画面の操作をし、電源を落とすと、琉偉をベッドに無理やり寝かせる。

「…そんなに怒るな」
「怒りますよ‼︎全く、過労で死にたいんですか⁈」

「…良いよ、別に死んでも」

琉偉の言葉に、更に怒る雪。

「死んだら困るんですよ!」
「…どうせ、会社のやつだろ?心配ない。マーがいるから」

…マー。課長の事か。

雪は思わず琉偉の頭をはたいた。当然琉偉は驚いている…叩かれた事ではない。

雪が泣きそうな顔をしているからだ。

「…じゃあ死んじゃえばいいじゃないですか!」

そう捨てゼリフを吐くと寝室を出て行こうとする。琉偉は少し焦って起き上がると、雪を抱き寄せた。

「…ゴメン…ウソだよ」
「…知りませんよ」

抱かれた体が熱い。…琉偉の熱が雪に伝わってくる。

「白井さんの為に、死なないから」
「…」

「だからもう、怒らないで」

ゆっくり振り返らすと、雪は泣いていて、琉偉は指の腹でその涙を拭った。

「お願いです。寝ててください。…何か作ってきますから」

そう言うと、鼻をすすって、困った顔をする。雪を見つめると。

「頭叩いてゴメンなさい」

と言うから、琉偉は笑ってしまった。
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