彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「…落ち着いたか？」
「…はい…すみません」

琉偉のマンションのリビングのソファーに座って、琉偉が雪に問いかけた。

雪は、目を赤くしたまま、俯き加減でそれに答えた。

「…何があった？」
「…」

優しい声に、また涙か浮かぶ。

「…聞かない方がいい？」

その言葉に、雪は首を振った。

「…琉偉さんが、私と、鮫島さんを別れさせた理由が…わかって」

「…」

「…何もかも、全部…私の為にしてくれたんですよね？…それなのに、私は、自分の事で頭が一杯で…琉偉さんに酷い事を…」

「…白井さん」

「なんと謝罪したらいいか」

「…謝らなくていい、いいんだ。この真相も話すつもりはなかったし…白井さんがこれ以上傷つくのは見たくなかったから…彼を本当に愛していたんだろ？…綺麗な思い出のまま、別れさせようと思った。それなのに、真相を知ってしまって、また傷つけたな…ゴメン」

「謝らないで！…謝らないでください。琉偉さんは何も悪くない。私を守ってくれた」

泣く雪を、見ていられなくて、琉偉はまた、雪を抱き締めた。

「…白井さんを守るのは当たり前だ。…言っただろ？俺は、白井さんが好きだって」

「…私は」

言いかけて、琉偉は、雪の唇に指を当て、首を振った。

「…わかってる、人の気持ちはそう簡単に変わらない。今みたいに、ただ傍にいてくれたらそれでいい」

琉偉の言葉に、雪は琉偉の胸に顔を埋めた。

琉偉に惹かれている事を言えなかった。
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