彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
…車は高級料亭の玄関前に停められた。

雪は、こんな店に入るのは初めてで、ついつい辺りをキョロキョロしてしまう。そんな雪を、瑠偉は面白そうに見ていた。

「…こんな日に、予約も無しによく入れましたね」

高級料亭ともなると、事前に予約が必要な筈、それなのに予約も無しに入れるなんて、雪としては、驚き以外ない。

「…ここの店はよく使うんだ。無理を言ったら意外に直ぐに女将が承諾してくれてな。沢山の人が居るところで、食事するのは好きじゃないと言ったら、女将がこの部屋を準備してくれた」

「…黒澤社長だからですね」

そう言った雪は、クスッと笑った。

黒澤コーポレーションと言えば、雑誌にも取り上げられるほど有名な企業だ。この料亭の女将だって、黒澤社長の言う事なら、直ぐに聞いてくれそうだ。

「…だろうな。…まぁ、こんな時こそ、職権乱用しておかないと」

と言って、琉偉も笑った。

それから、突然の来客にも関わらず、最高のおもてなしを受けた雪は、とても感動していた。琉偉はいつもの事なのか、さほど気にもとめていなかったが。

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