彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「…ご馳走様でした。こんなお店は初めてだったので、感動しっぱなしでした」

「そう?うん、まぁ、白井さんがそう言ってくれたら、嬉しいが」

「…それでは私はこれで」

そう言って頭を下げた雪は、大通りに向かって歩き出そうとする。が、琉偉は雪の肩を掴んだ。

勿論、雪は驚いて振り返る。

「…黒澤社長?まだ何か?」
「こんな時間だ、送る」

その言葉に驚いて、雪は慌てて首を振る。

「そんな!大通りに出れば、タクシーもつかまえられますから」
「…人の好意は素直に受けろ」

…、琉偉の言葉に、躊躇った雪だったが、数秒考え、小さく頷く。

それを確認した琉偉は、雪を車に乗せ、自分も乗り込んだ。

…車を走らせる事20分。雪の住むアパートに着いた。

車を降りた雪は、琉偉に礼を言う。

「…白井さん」
「…はい?」

「…今日、泣いてた理由は?」
「…プライベートな事なので、言いかねます」

そう言って言葉を濁した雪。

「…男か?」
「…⁈」

何も言わないのに、そう言われ、雪の目は揺れた。

まぁ、こんなクリスマスの夜に一人で泣いていたら、誰でもわかるか。

「…そんな男の事など、忘れろ」
「…社⁈」

…一瞬の出来事。窓から琉偉の手が伸びてきたと思えば、雪の手を手繰り寄せ、雪の唇に琉偉の唇が触れた。
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