彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「…いいえ、何でもないです。あの、電話は?」

焦る気持ちをなんとか抑え、話を変える雪。

「…それが」

琉偉のただならぬ空気に、息を呑む雪と冬馬。

「…案の定、頷かなかったって」


琉偉の言葉に、二人とも溜息をついた。だが、そんな二人をよそに、琉偉は至って冷静な顔をしていた。

「…なんで、そんなに冷静なんだよ、あんたは?」

冬馬はイラついた顔で琉偉に言う。

「…想定内だからだよ」
「…」

そう言ってニコリと微笑む琉偉に、冬馬は怪訝な顔をした。

「…これ」
「「…⁈」」

雪達の実家の旅館の土地や建物の権利書を、琉偉が手に持っていた。当然、二人は驚く。

「今朝一番の飛行機で、北海道に飛んで、白井さんのお父さんから、預かってきた。理由を話したら、直ぐに快く貸してくれて、驚いた」

…本当は、快く貸してくれるはずはない。琉偉は、何度も何度も頭を下げた。

それに根負けしたのは、父だった。
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