彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜
「…お待たせして申し訳ありません」

「…私は、貴方と約束をした覚えはない…黒澤社長」

怪訝な顔で、琉偉を見た相馬。それに対し、冷静沈着な琉偉。

「…周りに沢山のお客様もいますし、とりあえず、座りませんか?」

琉偉の言葉に、相馬は渋々席につき、琉偉も反対側の席についた。

「…白井さんは来ませんよ」

「…何故黒澤社長がここに来たんですか?」

「…相馬さん、貴方が卑怯な手を使うからだ。白井さんは、何があっても、貴方とは結婚などしない。いや、させません」

相馬を見据えて、琉偉は言い放った。

「…私が雪さんにどう言ったのか、お聞きになりましたか?」

「…いいえ、白井さんは最後まで、なにも言いませんでした。ですが、大体察しはつきますよ。私を盾に、白井さんを脅したんでしょう?」

その言葉に、相馬は笑う。

「…流石は黒澤社長だ。話が早い。今回、そちらか新たに立ち上げたホテル部門…うちなら、簡単に潰せますが、いかがでしょう?」

「…そうですね。ホテル業界では、飛天旅館がダントツのトップだ。初めてのうちなんて、潰すのは簡単でしょうね」

そう言った琉偉だが、顔はいたって穏やかで、相馬は苛立ちを覚えた。

「…ですが、うちの会社の方が規模も大きく、顔も広い。こんなこともあろうかと、あらゆる手段はこうじてありますよ。それにクリーンなうちの会社とは正反対の飛天さんは、叩けば叩くほど、誇りが出てきたのですが、潰れるのはどちらでしょうね?」

そう言うと、鞄の中から、大量の資料が出てきた。それを受け取った相馬の顔色が変わった。

「…白井さんや、ご両親が経営する旅館全てから手を引いて頂ければ、その事は公にはしません。しかし、少しでも変な動きをすれば、直ぐに、その資料は、警察に届けられる事をご了承下さい」

そう言うと、琉偉は立ち上がり、その場を後にした。

相馬は顔を歪ませ、資料を握りつぶした。
< 96 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop