深夜0時、キミと待ち合わせ。
「のの、もうタケくんの顔見れない……」

「大丈夫だよ……、きっとすぐに仲直り出来ると思う……」


落ち込んでいる柿崎さんを相手にしても、友達のいなかった私じゃ、気の利いたセリフが何ひとつ出てこない。


「あの……、いつもすごく仲良かったし、お互い好きなのが分かるし、えっと……」


月並みの言葉しか思いつかない。

私は毎日本を読んで、どんな表現力を培(つちか)ってきたっていうんだろう。

肝心な時には、全然役に立たない……。


「違うの、ごめんね紗帆ちゃん……」

「?」

「のの、まだちょっとレイジくんのこと、好きなのかもしれない……」


柿崎さんの瞳から零れる涙が、やけにスローモーションに私の目に映った。
< 250 / 360 >

この作品をシェア

pagetop