深夜0時、キミと待ち合わせ。
「あ……」

「あれ、えっと紗帆ちゃ……、じゃなくて、音無さん」


“紗帆ちゃん”?

そんな呼び方をするのはひとりしか知らないから、若干困惑してしまう。

前は、私のこと「音無さん」って呼んだのに。


佐伯くんは気まずそうに頭を掻いて、


「ごめん、いつもののかが「紗帆ちゃん、紗帆ちゃん」ってうるさいからさ、俺の中で音無さんって“紗帆ちゃん”なんだよね。気抜くとこっちで呼んじゃうな」


数えるほどしか会話をしたことがないけれど、佐伯くんは柿崎さんの話をする時にとても優しい目をする。

私がしたことは、この人のことも傷つける行為なんだ。


「……ののか、元気?」

「元気に……振る舞ってくれてます」

「寮でもそうなんだ。俺クラス同じだけど、全然話してないから」
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