深夜0時、キミと待ち合わせ。
なんだ……。

別に、何かを期待していたわけじゃないけど……。


本、読もう。

かばんを開けて、昨夜図書館から持ち帰った本を取り出す。

一応、図書館でページを開いて文字を追った記憶はあるのだけど、最初のページから読み直し。

真夜中くんが肩に寄りかかってきて邪魔するから、全然頭に入ってこなかった。

ずっと動悸がおかしくて……、あの時の私はどうかしてたんだ。

好きな人がいるとか、予想もしていなかったから、びっくりしただけ。


前髪が額にかからないから、下を向いても視界がすっきりしてる。

不思議な感じ……。


「え、なぁ、あれ誰?」

「あそこ、無言姫の席じゃね?」


おそらく私に向けられたであろう男子同士の噂話は、顔を上げなくても分かった。

ゴンッと、机に本が落ちる。

さすがハードカバー。いい音がする。
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