②オオカミさんの煩悩 部下に恋したエリート課長
「よっ、大神カチョー、ご苦労さんですっ」
「……。何故貴様が居る。熊野」
(ダマレ大神、抜け駆けは許さん)
俺達の密やかな応酬を気にする風もなく、赤野が俺のグラスにワインを注ぐ。
彼女は酒が入るといつも上機嫌である。
そこがまた…いや、やめておこう。
「いえね、道が分からなくて困ってたら、熊野センパイに偶然会って…あれ、大神課長?何か怒ってます?」
「いや…怒って…ない」
ニヤリと笑んで、勝ち誇る熊野。
“偶然”じゃねーだろ、ストーカーが。
俺の心の内を知ってか知らずか、朗らかに杯を掲げる赤野。
「ハイ。では3人で仕切り直して…」
「「カンパ~~イ」」
チリーン。
クリスタルのグラスが澄んだ音を奏でた。
何でこうなるんだ。