②オオカミさんの煩悩 部下に恋したエリート課長
 
「課長の風邪、私のせいだと思うんです!私が総務の子逹の前で、自慢したから!」

 …は?

「次の日、課長、エライ水浸しになってましたよね⁉なんか、『派手に濡らすと、大神さんに誘って貰えるゾ』という噂がたったらしく…本当にスミマセンっ」

 …なんかおかしいと思っていたが、赤野、またもやオマエかあ!

 …と怒鳴りたいところだが、今日はもう気力がない。


「…まあ、いいよ」

 ソファに寝そべった。景色がボンヤリと霞む。

 赤野が心配そうに見ている。
 
「課長、病院行きました?お薬飲んでます?」

「…キライなんだ、病院も、薬も…。ろくな思い出がない」

「ダメですよ、ちゃんと…せめて薬だけでもっ」

 赤野が慌てて卓上の袋を探る。

「…いいよ。…もう、帰れ。風邪が染るから」

 気持ちをスッキリ整理する、チャンスを逃すのは癪だが、俺は管理職。部下の健康にも気遣わねばならん。

「ダメです。…あった!はい、どうぞ」

「要らねえ…」

「ダメ‼」

 …オカンかよ。

「…じゃあ、…飲ませて。お前が…口移しで」

「は、はい?」

「冗談だよ。さ、早く帰んな、明日は里帰りすんだろ」

「じゃあ…」

 彼女は躊躇いがちに立ち上がった。

 帰るのかと思いきや、俺の側に回り、絨毯に膝をつく。

「…あ、あの。口移しはムリですけど…


「…っ⁉」

 1錠を唇の端からそっと押し込む。彼女の指が、唇から口内に触れる。

「…おい」

 また1錠。羞恥に震える指で、同じように挿れる。
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