②オオカミさんの煩悩 部下に恋したエリート課長
第2話 オオカミ課長の事情
俺、大神秋人は、我が社の創業以来初、若冠29歳で業務課長に抜擢されたという、出世街道まっしぐらのエリート・サラリーマンである。
これも、昨年の新規大口受注の取り付けと、普段のたゆみない社長への滅私奉公の結果なのである。
その俺が…。
今年の『当社若手OLが選ぶ、抱かれたい男ランキング』には間違いなくトップ5には入ろうという、この俺様がだ。
あろうことか、我が業務課きっての役立たず、新人2年目のお惚けOL、赤野燈子に…。
“恋”をしてしまった。
事の発端は、昨年度。
まだ係長だった俺と彼女が、一緒に一泊二日の出張に出た時の事だ。
気の進まない任務を終え、腐っていた俺は、気晴らしに赤野を飲みに誘った。
それが意外にもすっかり意気投合し、いざ“お持ち帰り”寸前かというところで。
今、俺の家のコタツにのさばっている、このガーディアン気取りのストーカーに阻止されてしまったのだ。
「ん、ナンだよ、じろじろ睨んで」
「別に」
その結果ーー
社会に入ってこの方誘った女に、しかもキスまでした女に、断られたことは一度もないこの俺がだ。
あんな、大ボケ小娘に“待った”を喰らわされることになってしまったのだ。