二十年目の初恋
二十年目の再会 10

「プロポーズの返事は最短六ヶ月。最長は……俺が死ぬまで。でも出来れば少しでも早い方がいいな。ヨボヨボの爺さんになってからじゃ、お前を抱けないからな」

「悠介……」
 なんだか赤くなってる自分がいた。
 悠介……。ありがとう。声に出して言えなかったけど心の中で呟いていた。

「さぁ、せっかく海に来たんだから、美味しいもの食べに行くぞ」

 新鮮なお刺身や天ぷら、海の幸ふんだんの遅めの昼ごはんを食べて

「ごちそうさま。すごく美味しかった。お腹いっぱい」

「うん。俺も久しぶりだった。さぁ、そろそろ帰るか。そうだ、干物でも買って行ってやるかな」

「実家?」

「うん。二人とも好きだから、たまにはな。ちょっと家に寄るから」


 しばらく走って悠介の実家。

「ちょっと待ってて」

 悠介は車から降りて家の中に入って行った。車の中で一人で待っていると突然声を掛けられた。

「あらっ? 優華ちゃん? 優華ちゃんでしょう?」
 悠介のお母さん。

「あっ、おばさん。ご無沙汰してます」

「悠介と一緒に来たの?」

「あぁ、はい」

「こんな所に居ないで、ほら、上がってちょうだい」

 そこへ悠介が
「あぁ、母さん。干物、冷蔵庫に入れといたから」

「ありがとう。もう行っちゃうの?」

「うん。また来るよ」

「じゃあ、優華ちゃん、また来てね。待ってるから」

「ありがとう。おばさん。じゃあ……」

 車が走り出して……。でも、おばさんは、いつまでも見送ってくれていた。

「なんか、おばさんに悪いことしたみたいな気がする」

「いいよ。気にするな。優華が今すぐプロポーズOKしてくれるなら戻るけど……」


 その後は、なんだかちょっとだけ気まずくて黙って外の景色を眺めてた。

 そして悠介のマンション……。

「コーヒー入れるから、ちょっとだけ寄ってけ。後で送るから」

「うん」

 悠介のマンションは家より全然広くて、キッチンも整ってて……。
 ここで悠介の奥さん、食事作ってたのかななんて余計なこと考えてしまった……。

「ここ、半年前に引っ越して来たんだ」

「えっ? そうなの……」

「なんか、出て行かれた後、一人っていうのも変な感じでさ」
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