二十年目の初恋
休日 9
「ありがとう」
分かってくれて。
「じゃあ、これをお願いします」
と悠介。
可愛いケースに入れて綺麗にラッピングしてくれた。
「ありがとうございました」
と笑顔で見送ってくれて、お店を出た。
「悠介、ありがとう。ずっと大切にするね」
「優華、俺は優華に感謝するよ」
「えっ ? どうして ? プレゼントして貰ったの私の方だよ」
「エンゲージリングは給料の三ヶ月分だとか、そういう世間の相場とか常識とか関係ないんだよな。二人の常識を作って行けば良いことだよな。優華に教えられた気がするよ」
「そんなことないよ。ただ私は指輪が苦手なだけだから。それに悠介のお給料の三か月分なんて、もったいなくて毎日着けていられなくなるから。高ければ良いとか大きければ良いって考え方ちょっと違うんじゃないかと思ってるだけ」
「実は前の奥さんは連れて行った店で一番新しくて一番高い物を見せてって言ったんだ」
「でもそれは、とびきりのお嬢さんだから。それが彼女にとっての常識だったんでしょう ? しょうがないことなんじゃないのかな」
「そうだな。でももっと高い物でも良かったのに」
「だから値段じゃないの。私が気に入って綺麗で素敵だと思った物が私にとっての一番なの。それを悠介からプレゼントして貰うんだから最高に嬉しいことなのよ。分からない ?」
「良く分かったよ。俺にとって優華が一番なんだってことが。さぁ、行くか ?」
「うん」
と答えた。何処に行くのとは聞かなかった。悠介と一緒なら何処でも構わなかったから。
「次は優華をお姫様にしてくれるところだよ」
「えっ ?」
どういう意味なのか分からなかったけど。着いたところは有名なブライダルショップ。
「写真は撮るって約束だよ」
「うん。でもこんな有名なショップじゃなくても……」
「一番綺麗な優華を残したいから。最高のドレスを着た優華を見たいんだ」
「悠介……」
「ほら、入るよ」
悠介は既に電話で予約してくれていたみたい。あまりにも応対がスムーズ過ぎて……。すぐに素敵なドレスの並んだ部屋に通された。